デリヘル嬢はかく語りき
デリバリーヘルス ロールシャッハに勤務するデリヘル嬢。
ニーチェに傾倒するツインテ黒ギャルのさとり(源氏名)。
口より先に手が出るつり目に困り眉のリューコ(源氏名)。
自傷癖の有る黒髪ぱっつんロリのアリス(源氏名)。
彼女たちが
「魂の救済とは何なのか?」
「電子レンジは人類にとってオーバーテクノロジーではないだろうか?」
「ラーメンとつけ麺だと、つけ麺がちょっと高いのなんで?」
など、世界の深淵について語り合ってるようなそうでもないような漫画『しょじじょうにつき。』。
世の中色々な職業漫画がありますが、個人的に職業漫画として一番好きな漫画が『しょじじょうにつき。』(全1巻)なのです。
「デリヘル嬢」という職業が何かわからない方もおられると思いますが、アレです。男性専門の出張カウンセラーです。全裸のカウンセラー(追加料金でコスチュームが選べる場合もあります)。
お互い全裸だとね、もう見栄も何も無くなりますからね。そうした状態で男性の内に秘めたあれやこれやを精神的にも物理的にも放出させ、そして受け止める。それがデリヘル嬢というお仕事なわけですよ。
よくわからんかった子はお母ちゃんがおらん時にお父ちゃんに聞いてな?
当然さとりたちもデリヘル嬢ですから、仕事上様々な男性が普段は内に秘めている姿と向き合うことになります。
裸エプロンや金髪ツインテのツンデレ美少女を求めるオタク。
並のSMを体験しつくし「殺すつもりで来てくれ」と不敵な笑みを浮かべる中年男性。
離婚問題に直面するセーラー服おじさん。
ゴリラ。
彼女たちは彼らと向き合い、その心を受け止めるのです。仕事で。
そう!仕事なんですよ!
セーラー服を引退しようとしているおじさんをセーラー服の道に引き止めても!
ゴリラに会話を求められて哲学的な会話を重ねても!
プレイの時間が終わって離れてしまえば他人。愛着も無いが嫌悪もしない。ウエットでもドライでもない。意識高いことも言わないし苦難に立ち向かうこともないけど無責任な仕事をしているわけでもない。
このバランスがなんだか職業ものとして読んでてとても心地よかったわけです。
この単行本が作者の森キャベツさんのデビュー作でありながら諸事情につき商業引退作でもあり、なんか名は体を表しちゃった感のある『しょじじょうにつき。』。裏サンデーで序盤の話を読むこともできるので興味を持たれた方はいかがでしょう。
ちなみにゴリラとかセーラー服おじさんが出て来るのは、ほとんどが裏サンデーで公開されてる1~2話と最終話の間の話だったりします。