電光らんちうキック

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目ん玉飛び出るようなプロレス漫画

プロレスゲームの名作である『ファイヤープロレスリング』の最新作、ファイヤープロレスリング ワールド』(Steam,PS4)が前作から13年の時を経て発売されました。 

 前作『ファイプロ・リターンズ』でレスラーをエディットしては数年間ホームページにアップし続けていた自分としては感無量。steamでのアーリーアクセス版を一足早く購入してPS4版も購入。
往年のファイプロファンたちの喜びの声や自慢のエディットレスラーをSNSで目にすることもできて、良い時代になったとしみじみ思っております。

発売されてすぐにバグやら何やらでゴタゴタしてるんですがそれはさておき…

 

というわけで、ファイプロ発売を祝して「だいたい5巻以内で完結する良作プロレス漫画」を御紹介。
いや、いつかやろうと思ってたんですがなかなか好きなジャンルの話ってかえって踏ん切りがつかなくて…


『1・2の三四郎 2』(小林まこと、全6巻、1994年) 

 海外修行から帰国したが、所属団体が解散していたためそのまま引退したプロレスラーの三四郎
ファミレスの店長としてそれなりに満足して暮らしていた三四郎だったが、かつての同僚が立ち上げた団体を助けるために再びリングに戻るのだった。

タイトルに「2」と入っていることから分かるように『1・2の三四郎』の続編にあたるが、「2」から読んでも全く問題は無い。

この作品の魅力は「プロレスラーがプロレスラーとして強い」という描写の説得力にある。
連載当時のプロレス界は多団体時代に入った頃で、デスマッチ路線のFMWや格闘技色の強いUWFが一世を風靡していた頃。作中でも同様にデスマッチ系団体や格闘技色の強い団体が描かれており、特に格闘技色の強いプロレス団体FTOを率いるかつての後輩・赤城欣市との確執がメインとなる。

アントニオ猪木の格闘技戦から20年近く経ち、格闘技路線のプロレスが生まれたからこそ生じる「プロレスラーは本当に強いのか?」という疑問。ラリアットやブレンバスターなんて技は相手の協力が無いと成り立たないと作中で赤城にも純プロレス批判をさせている。
そんなプロレスに対する疑念の数々を三四郎は言葉ではなくプロレスで晴らして見せる。理屈でもなく格闘技に対応するでもなく、ただ鍛えた身体で、身につけたプロレスだけで。
プロレス漫画でこれほどカタルシスをもたらす作品は『1・2の三四郎 2』を置いて他にないと断言できる。全プロレス漫画の中でも比類無き名作。


『ロックアップ』(猿渡哲也、全4巻、2013年)

 あかつきプロレスの社長、兼現役レスラーのサムソン高木末期がんに侵されている上に長年のファイトで頸椎も肘も膝もボロボロ。満身創痍の身体を抱えて貧乏インディ団体のために今日もリングに上がる。

プロレスとは何かと問われれば「受けを見せる格闘技」であるというのが一つの答えになる。多くの格闘技が「(ルールの範囲内で)相手に何もさせずに一方的に無力化する」のが理想であるのとは真逆である。
プロレスラーは様々な攻撃を受ける。他の格闘技では危険であるため反則になるような技を仕掛けられても、体重100kgを越える男が頭上から降ってきても、パイプ椅子を振りかぶってきても受ける。
そのため「プロレスは信頼関係で成り立つ」とよく言われるが、サムソン高木が見せるのはまさしくその「信頼」そのもの。
自分の殻を破れずにいる新人にも、有刺鉄線を巻いたバットを持って殺し合いのつもりで挑んでいた相手にも、サムソンは「大丈夫だ。心配すんな」とボロボロの身体を差し出す。
『1・2の三四郎 2』が見せるのが攻めの強さだとすれば、『ロックアップ』が見せるのは心身共に筋の通った受けの強さ。プロレスラーの生き様を見たいのならこの作品一択。


ウルティモ・スーパースター』(須田信太郎、全2巻、2003年)

ウルティモ・スーパースター1巻 デジタルブックファクトリー

ウルティモ・スーパースター1巻 デジタルブックファクトリー

 

退屈な高校生活を送っていた三波ヨシアキの元に現れたのはウルティモ・スーパースターとるちゃプロレスの一団だった。元レスラーだった担任教師を拉致して試合するスターを見た三波は、翌日るちゃプロレスのおんぼろバスに乗り込むのだった。

プロレスの中でも空中殺法ジャベと呼ばれる複雑な関節技を主体としたスタイルをルチャリブレと呼ぶ。本場メキシコでもルチャドールルチャ・リブレのレスラー)はプロレスの他に本業を持つ者が多いが、るちゃプロレスの面々も本業を持ちたまの興行の時にだけ覆面を被る。だが、スターだけは24時間常にウルティモ・スーパースターとして生きていた。三波はそんなるちゃプロレスの面々と行動を共にすることでルチャの本質である"自由への闘い"に触れていく。
ルチャ・リブレリンピオ(善玉)、ルード(悪玉)と役割がハッキリしていて、なおかつ魅せ技の要素を持った技が多い。だからといって勝負論がないわけではない。格闘技でもなく、ショーでもなく、同時にどちらでもある。「プロレスとは何か」という問いに対してこの作品は一つの答えを見せてくれるだろう。

なお書籍版は1巻までしか出ておらず、全2巻で最終話まで収録された電子書籍版が事実上の完全版となっている。個人的には書籍版で収録されなかった名作「真夜中のルチャ教室」が電子書籍版で読めるようになったのは本当に嬉しい。 

 

『強くてカッコイイ女子は好きですか?』(川村一真、既刊1巻、2015年)

強くてカッコイイ女子は好きですか?(1) (星海社COMICS)

強くてカッコイイ女子は好きですか?(1) (星海社COMICS)

 

 強くてカッコイイ女子に憧れて女子プロレスの練習生になった美枝つかさ。やる気にあふれるつかさだったがいかんせんカッコイイを目指すにはずいぶんカワイイ寄りなのであった。

あんまりガッツリしたプロレス漫画ばかりだと胃もたれするのでここでライトな女子プロレス練習生漫画を投入。
作風は軽めの4コマ漫画なので読みやすいが、ただプロレスの道場を舞台にかわいい子がキャッキャするだけの漫画ではなくプロレス描写が丁寧なのが高ポイント。

その上で他の練習生も「悪役(ヒール)レスラーを目指すおっとり乙女」「社畜生活から抜け出したちびっこ24歳」「女性人気確実な長身美形なのに人前ではマスク必須な恥ずかしがり屋」とキャラが立っているのも嬉しい。
現在は休載中ということだが、是非とも復帰して続きを読ませていただきたい。

なお、基本的にはツイ4で現在公開されている範囲の全話を読むことができる(単行本1巻には175/252あたりまで収録)。

 

sai-zen-sen.jp


『プロレスメン』(ジェントルメン中村、全1巻、2011年) 

プロレスメン (ヤンマガKCスペシャル)

プロレスメン (ヤンマガKCスペシャル)

 

 マスラオプロレスの無宿系極悪ユニット「ホームレス・ウォリアーズ」ドリー森下と矢井田耕三。彼らは「ホームレス」というキャラクターに説得力を持たせるため、誰も見ていない控室でも残飯を使った炊き出しを作り生肉を食らう。突飛な行動に見えるがそこには徹底したプロ意識と団体全体を見据えた洞察力があった。新弟子の虎馬俵太は破天荒でありながらも理知的な2人から多くを学ぶのである。

『強くてカッコイイ女子は好きですか?』と同じく練習生が主役の漫画だが、『強くて~』の売りが読みやすさと明るさだとしたら『プロレスメン』は絵柄も内容もクセが強くて濃厚と真逆の作風。

タックルしてきた相手の背中にゲロを吐く。
パッとしないレスラーに噛みついて血みどろにする。
遠征先のスーパーで野菜を食い散らかす。
だがそれら全てに理由があり最終的にみんながwin-winの関係になる。
この一見バカらしくも見える展開の裏にプロレスの本質が垣間見えるのも事実。垣間見える…見えてると思うんだけどうん、見える見える!
絵柄に怯まなければ是非一読してもらいたい。