たとえばそこにこんな歌があれば
部活モノの漫画は星の数ほどありますが今回とりあげるのは「工業高校の合唱部」漫画『はしっこアンサンブル』。
「工業高校で合唱部?ノコギリに弦を当てて歌わせたりするの?横山ホットブラザーズなの?」とギャグ漫画的な作品を想像しましたが然に非ず。
低い声にコンプレックスを持つ新入生の藤吉晃が、同じく新入生で合唱部を作ろうと1人校内で高らかに歌い続ける木村仁と出会うことから始まるストレートな部活モノです。
「部員を集めて新しい部活を作ろう」と部活モノとしては王道ですが、特殊なのはその方向性。
歌がテーマの作品となると「想い」だとか「気持ち」だとかを前面に出しがちですが、仁が常に手に持っているのは「周波数解析アプリ」、語るのは「声帯と発声のメカニズム」「筋肉」「音の仕組み」とあまりに論理的!最高にロジカル!
このロジカルさに完全にやられたのが同級生の折原昴聖のエピソードでした。
金髪で無愛想な上に常時イヤホンをつけて1人でいるので何かと目立つ上、目立つがゆえにちょっかいを出され怪力で暴れ狂うトラブルメーカー。
その原因は彼の幼少時のトラウマにありその解決のカギになるのが合唱なのですが、このエピソードの解決があまりにロジカルだったのです!
「歌で心が癒された」とか「弟の想いが云々」とかでいくらでも感動のエピソードにできるのに「音が脳に与える影響」で説明しきっちゃった!
これで完全にやられてしまいました。
ロジカルロジカルと言ってきましたが論理一辺倒に振れているわけではありません。
仁が論理的な反面で人の気持ちの機微を推し量る能力に欠けるのに対して、晃が児童文学が好きで言葉への感度が高く空気も読めるためバランスがとれています。脇を固めるクラスメイトたちも個性豊かで学園生活のシーンだけでも楽しく、そして工業高校という学園モノではやや特殊な環境は良いスパイスになっています。
このとがった所はとがらせつつ絶妙のバランスが取れているのが『はしっこアンサンブル』最大の魅力なのです。
工業高校ゆえに数少ない女性陣も巨乳でメガネの担任、盗癖持ちひきこもりボサ髪メガネっ子と逸材揃いでバランスが良いのもいいですね!