電光らんちうキック

漫画、特撮、映画に関してぼちぼちつぶやいてます

目ん玉飛び出るようなプロレス漫画

プロレスゲームの名作である『ファイヤープロレスリング』の最新作、ファイヤープロレスリング ワールド』(Steam,PS4)が前作から13年の時を経て発売されました。 

 前作『ファイプロ・リターンズ』でレスラーをエディットしては数年間ホームページにアップし続けていた自分としては感無量。steamでのアーリーアクセス版を一足早く購入してPS4版も購入。
往年のファイプロファンたちの喜びの声や自慢のエディットレスラーをSNSで目にすることもできて、良い時代になったとしみじみ思っております。

発売されてすぐにバグやら何やらでゴタゴタしてるんですがそれはさておき…

 

というわけで、ファイプロ発売を祝して「だいたい5巻以内で完結する良作プロレス漫画」を御紹介。
いや、いつかやろうと思ってたんですがなかなか好きなジャンルの話ってかえって踏ん切りがつかなくて…


『1・2の三四郎 2』(小林まこと、全6巻、1994年) 

 海外修行から帰国したが、所属団体が解散していたためそのまま引退したプロレスラーの三四郎
ファミレスの店長としてそれなりに満足して暮らしていた三四郎だったが、かつての同僚が立ち上げた団体を助けるために再びリングに戻るのだった。

タイトルに「2」と入っていることから分かるように『1・2の三四郎』の続編にあたるが、「2」から読んでも全く問題は無い。

この作品の魅力は「プロレスラーがプロレスラーとして強い」という描写の説得力にある。
連載当時のプロレス界は多団体時代に入った頃で、デスマッチ路線のFMWや格闘技色の強いUWFが一世を風靡していた頃。作中でも同様にデスマッチ系団体や格闘技色の強い団体が描かれており、特に格闘技色の強いプロレス団体FTOを率いるかつての後輩・赤城欣市との確執がメインとなる。

アントニオ猪木の格闘技戦から20年近く経ち、格闘技路線のプロレスが生まれたからこそ生じる「プロレスラーは本当に強いのか?」という疑問。ラリアットやブレンバスターなんて技は相手の協力が無いと成り立たないと作中で赤城にも純プロレス批判をさせている。
そんなプロレスに対する疑念の数々を三四郎は言葉ではなくプロレスで晴らして見せる。理屈でもなく格闘技に対応するでもなく、ただ鍛えた身体で、身につけたプロレスだけで。
プロレス漫画でこれほどカタルシスをもたらす作品は『1・2の三四郎 2』を置いて他にないと断言できる。全プロレス漫画の中でも比類無き名作。


『ロックアップ』(猿渡哲也、全4巻、2013年)

 あかつきプロレスの社長、兼現役レスラーのサムソン高木末期がんに侵されている上に長年のファイトで頸椎も肘も膝もボロボロ。満身創痍の身体を抱えて貧乏インディ団体のために今日もリングに上がる。

プロレスとは何かと問われれば「受けを見せる格闘技」であるというのが一つの答えになる。多くの格闘技が「(ルールの範囲内で)相手に何もさせずに一方的に無力化する」のが理想であるのとは真逆である。
プロレスラーは様々な攻撃を受ける。他の格闘技では危険であるため反則になるような技を仕掛けられても、体重100kgを越える男が頭上から降ってきても、パイプ椅子を振りかぶってきても受ける。
そのため「プロレスは信頼関係で成り立つ」とよく言われるが、サムソン高木が見せるのはまさしくその「信頼」そのもの。
自分の殻を破れずにいる新人にも、有刺鉄線を巻いたバットを持って殺し合いのつもりで挑んでいた相手にも、サムソンは「大丈夫だ。心配すんな」とボロボロの身体を差し出す。
『1・2の三四郎 2』が見せるのが攻めの強さだとすれば、『ロックアップ』が見せるのは心身共に筋の通った受けの強さ。プロレスラーの生き様を見たいのならこの作品一択。


ウルティモ・スーパースター』(須田信太郎、全2巻、2003年)

ウルティモ・スーパースター1巻 デジタルブックファクトリー

ウルティモ・スーパースター1巻 デジタルブックファクトリー

 

退屈な高校生活を送っていた三波ヨシアキの元に現れたのはウルティモ・スーパースターとるちゃプロレスの一団だった。元レスラーだった担任教師を拉致して試合するスターを見た三波は、翌日るちゃプロレスのおんぼろバスに乗り込むのだった。

プロレスの中でも空中殺法ジャベと呼ばれる複雑な関節技を主体としたスタイルをルチャリブレと呼ぶ。本場メキシコでもルチャドールルチャ・リブレのレスラー)はプロレスの他に本業を持つ者が多いが、るちゃプロレスの面々も本業を持ちたまの興行の時にだけ覆面を被る。だが、スターだけは24時間常にウルティモ・スーパースターとして生きていた。三波はそんなるちゃプロレスの面々と行動を共にすることでルチャの本質である"自由への闘い"に触れていく。
ルチャ・リブレリンピオ(善玉)、ルード(悪玉)と役割がハッキリしていて、なおかつ魅せ技の要素を持った技が多い。だからといって勝負論がないわけではない。格闘技でもなく、ショーでもなく、同時にどちらでもある。「プロレスとは何か」という問いに対してこの作品は一つの答えを見せてくれるだろう。

なお書籍版は1巻までしか出ておらず、全2巻で最終話まで収録された電子書籍版が事実上の完全版となっている。個人的には書籍版で収録されなかった名作「真夜中のルチャ教室」が電子書籍版で読めるようになったのは本当に嬉しい。 

 

『強くてカッコイイ女子は好きですか?』(川村一真、既刊1巻、2015年)

強くてカッコイイ女子は好きですか?(1) (星海社COMICS)

強くてカッコイイ女子は好きですか?(1) (星海社COMICS)

 

 強くてカッコイイ女子に憧れて女子プロレスの練習生になった美枝つかさ。やる気にあふれるつかさだったがいかんせんカッコイイを目指すにはずいぶんカワイイ寄りなのであった。

あんまりガッツリしたプロレス漫画ばかりだと胃もたれするのでここでライトな女子プロレス練習生漫画を投入。
作風は軽めの4コマ漫画なので読みやすいが、ただプロレスの道場を舞台にかわいい子がキャッキャするだけの漫画ではなくプロレス描写が丁寧なのが高ポイント。

その上で他の練習生も「悪役(ヒール)レスラーを目指すおっとり乙女」「社畜生活から抜け出したちびっこ24歳」「女性人気確実な長身美形なのに人前ではマスク必須な恥ずかしがり屋」とキャラが立っているのも嬉しい。
現在は休載中ということだが、是非とも復帰して続きを読ませていただきたい。

なお、基本的にはツイ4で現在公開されている範囲の全話を読むことができる(単行本1巻には175/252あたりまで収録)。

 

sai-zen-sen.jp


『プロレスメン』(ジェントルメン中村、全1巻、2011年) 

プロレスメン (ヤンマガKCスペシャル)

プロレスメン (ヤンマガKCスペシャル)

 

 マスラオプロレスの無宿系極悪ユニット「ホームレス・ウォリアーズ」ドリー森下と矢井田耕三。彼らは「ホームレス」というキャラクターに説得力を持たせるため、誰も見ていない控室でも残飯を使った炊き出しを作り生肉を食らう。突飛な行動に見えるがそこには徹底したプロ意識と団体全体を見据えた洞察力があった。新弟子の虎馬俵太は破天荒でありながらも理知的な2人から多くを学ぶのである。

『強くてカッコイイ女子は好きですか?』と同じく練習生が主役の漫画だが、『強くて~』の売りが読みやすさと明るさだとしたら『プロレスメン』は絵柄も内容もクセが強くて濃厚と真逆の作風。

タックルしてきた相手の背中にゲロを吐く。
パッとしないレスラーに噛みついて血みどろにする。
遠征先のスーパーで野菜を食い散らかす。
だがそれら全てに理由があり最終的にみんながwin-winの関係になる。
この一見バカらしくも見える展開の裏にプロレスの本質が垣間見えるのも事実。垣間見える…見えてると思うんだけどうん、見える見える!
絵柄に怯まなければ是非一読してもらいたい。

たまに行くならこんな古本屋台

ジャンパーを羽織り野球帽をかぶったオヤジが1人、屋台の向こうで背中を丸めて煙草を吹かす。
屋台には古本。本好きの心をくすぐる選りすぐりがみっしりと詰められている。
メニューは無い。古本屋だから。
白波のお湯割りだけ出してくれる。一杯だけ。100円。屋台だから。
そこは本と酒を愛する者たちの憩いのオアシス。 

古本屋台 (書籍扱いコミック)

古本屋台 (書籍扱いコミック)

 

 

 「こんな場所があればいいのにな」という作品は多々ある。
一流のバーテンとこだわりの酒が待つBARレモン・ハート
ダンジョンと呼ばれるほどの広大な地下に古今東西の漫画を所蔵する金魚屋古書店。 

BARレモン・ハート (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

BARレモン・ハート (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

 

 

金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

 

 

『古本屋台』も同様にある種の理想郷漫画だ。
ただ、前述の作品たちと決定的に違う点がある。
古本に関する薀蓄が無い。
本のタイトルが出てくることすら稀である。

だが、それでいいのだ。


この屋台自体が稀覯本を並べるような屋台ではない。
酒だって出てくるのはお湯割りだけ。
言葉少なで頑固だがたまに小粋な所を見せるオヤジの屋台で、古本の背を眺めながら名前も知らない馴染みの客と他愛も無い話をする。
この屋台はそういう場所なのだ。


酒の臭いがすると帰らされることがある。
屋台が現れずやきもきしながら過ごす日がある。
テレビで紹介されてできた人だかりを遠巻きに眺めて「メーワクな話だぜ、クソ」と独り言ちる時もある。
オヤジのさりげない教養に嬉しくなる日もある。

 

『古本屋台』を読んで、そんな「こんな場所があればいいのにな」を是非味わってほしい。

球鬼Zの異常な野球  または私は如何にして心配するのを止めて前田愛を愛していたのか

1998年頃。前田愛のグラビア目当てで買った『ヤングチャンピオン』。
一応中身も読むかと開いた先で目にした野球漫画の一場面。

 

二人の男がそれぞれマウンドとホームベース上に立つ。

「お互いボールは3球……3球で相手を破壊した方が勝ちです」
「物騒な…雪合戦てところだな……」

 

……野球漫画?え?

ピッチャーの人、顔を真っ黒に塗って白で「Z」ってペイントしてるんですけど、彼ひょっとして主人公?

それが『球鬼Z』との出会いでした。

 


あ、ちなみに前田愛というのはですね

元々はジュニアアイドルだったんですよ。当時はチャイドルなんて呼ばれてましたけどね。
髪はショートカットで中性的な顔立ちをして、その少年ぽさがある美少女感がたまらなかったんだなぁ。


ガメラ3 邪神覚醒』の比良坂綾奈でわかってもらえるとそれが一番早い。あの子ですよ。「イリス…熱いよ…」のあの比良坂綾奈。わかってくれるか?わかってくれた君とは美味い酒が飲めそうだ!

 

もう3次元のアイドルとか全然興味無かったんですけどね。前田愛だけですよ、写真集とか買ったの。初めて買ったのが『1311』だったのはよく覚えてる。妹の前田亜季と一緒の写真集で、姉が13歳、妹が11歳だから『1311』。古い校舎で制服や体操服着てる写真とかね、沖縄の古民家でゆったりしてる写真とかね、実に良い。芸術ですよ。ただブルマを大写しにして足に「LOVE」って書いてる写真だけはいただけなかったな。この写真集はね。そういうんじゃない。そういうんじゃないんだよ。

 

妹もかわいいんですよ。「美少女」ってカテゴリーに入るのは間違いなく妹の前田亜季の方。
でもね、姉の前田愛にはですね、なんていうのかな……あるじゃないですか。中学生の頃特有の中性的というか、双性的というか、加えて子供だけど大人になりかけてるというか、その感じがすごく強く出ててですね。
それでまたね、目が強い!真っ直ぐこちらを見据えるような視線!屈託ない少女の目をしてる写真もあるのに、時にこちらを射すくめるような強い目をしてる写真があってね。そんな目で見られたらそれはもう駄目ですよ。魅了されてしまいますよ。

 

はみだし刑事情熱系』も良かったな。柴田恭兵が演じる刑事・高見兵吾の一人娘役でね。早くに両親が離婚してるから兵吾が父親だって知らなくて、母の部下の一人の刑事と友達として接してると思ってるから「兵吾くん」なんて呼ぶんですけど、これがまた屈託なくてかわいいんだ。
全話録画して登場シーンだけ編集してまとめたテープとか作ったなぁ。刑事ものだからピンチに巻き込まれるシーンもそこそこあったっけ。セーラー服でね、囚われの身になったりしてね。
あのテープどうしたかな。さすがに途中で冷静になって作るのやめたけど。知人に「これはまた業の深いもの作ってますね」とか言われたっけ。

 

そんな前田愛もさ、六代目中村勘九郎と結婚して今では梨園で二児の母ですよ。当時はやっぱりショックはあったけど、いつかは来る夢の終わりですからね。
3次元のアイドルに夢中になったのは彼女が最初で最後だったなぁ。いや、いい夢見せてもらいましたよ。

 

 閑話休題

 


登録名はZ。本名経歴一切不明。背番号999。
自分の望む1打席のみ当番するペイント投手。
160キロから時に170キロを超える速球のみが武器。
変化球は知らない。
「セット・ポジションて何だ?」と真顔でキャッチャーに尋ねる野球のド素人。

 

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そのZが速球を武器に戦う相手は
自軍の4番バッター
ボクサー!
米軍特殊部隊の人間兵器!

 

対決方法は
自軍の4番バッター鬼塚 

→ Zの投球と鬼塚のスイング。先に相手にブチ当てた方が勝ち(至近距離)


ボクサー 

→ Zの投球とボクサーのパンチ。先に相手にブチ当てた方が勝ち(至近距離)


米軍特殊部隊の人間兵器 

→ 野球

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野球やれよ!!
というか、なんで米軍特殊部隊が相手の時は野球勝負なんだよ!

 

おかしい。でも、おかしくないのです。
何故ならZは野球がしたいわけではない。ただ勝負の快楽を求めているだけなのだから。

 

「何か面白い野球漫画知らない?」と聞かれたら「『球鬼Z』だな」と即答してきた私ですが、なかなか現物を見つけるのが難しい時代が続いていました。

その『球鬼Z』も電子書籍化されて誰でも読めるようになったのです。良い時代だ。
皆さまもこの機会に是非。

 

 

球鬼Z 1巻

球鬼Z 1巻

 

  

球鬼Z 2巻

球鬼Z 2巻

 

 

班目ハーレムのその陰に

 

 

げんしけん 二代目』の最終巻が発売されました。

げんしけん』(以下・無印と呼称)の主題がオタク系サークルの人間模様だったのに対し、げんしけん 二代目』の主題はOBの斑目晴信一個人の恋愛模様(通称・班目ハーレム)に変化。
かつて片思いしていた相手を忘れられずにいる班目に対して、何故かサークル関係者を中心に班目の彼女候補が次々と現れ、最終巻ではそのハーレムの結末が描かれました。


その感想をあちこちで読んでるわけですが

「俺たちの知ってるオタクじゃなくなった!」

って感想が多いですね。


これはこういう感想を書いた人たちがだいたい無印の登場人物と自分たちを重ねられた世代で、二代目がそれから10年近い年月が経ってからの連載だからでしょう。自分も無印の頃に大学生だった世代です。
(『げんしけん』2002~2004年、『げんしけん 二代目』は2010~2016年に連載)

また、無印げんしけんの部員が男性中心だったに対し、二代目ではほぼ女性のみになったという要因もあるのでそりゃ当時の男性読者からしたら違和感しか無いでしょう。「これこそ俺たちの世界だ!」って言われる方がビックリだ。


でまぁ、そのあたりはいいとして…これらの感想の中でみんな口を揃えて言ってて違和感を感じた事がありました。

それが

「クッチー(朽木学)はどうでもいい」

「あいつがいなかったら良作なのに」

という主張。


マジで?クッチーがいらない?
クッチーこそ「俺たちの知ってるオタク」そのものの姿じゃないの!?

 


朽木学げんしけんの問題児です。

 

二代目においては卒業をひかえた3年生となっていますが、普段の空気を読まない言動などから他の現役部員たちからはほぼ相手にされていません。女性主体のサークルでセクハラめいた発言も多いから当然でしょう。

でもね、クッチーってオタクの悪い所を寄せ集めた悪い意味の等身大キャラじゃない?


変に露悪的で、悪ノリして、根は臆病で、何も為さず、見た目もさえず、文句は多く、かと言ってみんなを敵に回せるほどの悪人でもなく、女性の多いサークルでひょっとしたら彼女くらいできるんじゃないかと期待はすれど具体的な行動は無い。


そんな彼は「俺たちの知ってるオタク」に含まれないの?

みんなはクッチーを小馬鹿にできるほど立派な人格のオタクとして生きてきたの?

マジか、すげぇな。
自分の狭い観測範囲で恐縮ですが、男性オタクというのはクッチーと似た側面をどこか持ってるもんだと思うのですよ。


そんなクッチーがさ、卒業してさ、「とりあえず」って感じだけど花束と寄せ書きの色紙もらってさ、感極まってマジ泣きしたんだよ?
これは切って捨てて良い余分なシーンなの?
キモいからいない方が良かったって言っちゃうの?
自分が『げんしけん 二代目』の最終巻を読んでウルッと来たのここだったよ。何者にもなれなかった自分とクッチーがダブったんですよ。

でも、そんなクッチーがたとえとりあえずでも祝福されてるんだもの。


ハーレム作品として見たらクッチーは確かに死ぬほどいらないキャラかもしれない。
でも、オタクサークル作品として考えたら彼はもう少しだけ目を向けられても、労いの言葉をかけられてもいいんじゃないかと、そう思うのです。

孤高 vs 現実

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怪獣。
いくら巨体であってもゾウやクジラを怪獣とは呼びません。
言語学上での厳密な区分はともかく、怪獣とはその存在が「異物」となる生物なのだと思います。

 

『いに怪することなく、獣じつしたひび』は怪獣のことで頭がいっぱいの女子高生・倉田さんの物語。
と同時に"2人"の怪獣の物語でもあります。

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教室で怪獣(東宝大映系)の本を黙々と読み、お弁当も1人屋上で食べる倉田さんはクラスで浮いた存在です。たとえ害を為さずとも皆と異なる嗜好を持ってグループに属さない倉田さんは教室の「異物」です。

 

そしてもう1人の「異物」北川えり。彼女は倉田さんとは真逆の存在。男性の存在が絶えることは無く、常に苛立ち、不満があれば人目をはばかることなく大声で不満を口にする。彼女もまた教室の「異物」です。

 

 

しかし、2人ともクラスで孤立していることなど意にも介しません。
倉田さんは常に怪獣のことに思いを巡らせ、自分が孤立していることなど気にもとめず満ち足りた表情を浮かべます。

体育の授業に参加しなかった(組を作ってあぶれた)罰として体育教官室の掃除をさせられても水口のぬめりにヘドラを思い、下校時に大雨に降られても暴風雨の中でラドンを思う。

常に心は怪獣と共にあるその姿勢はぶれることがありません。


北川さんは理不尽に対してストレートに怒りをぶつけ孤高を貫きます。デートのドタキャンのメールを受け取れば教室内であろうとも大声で不満を叫び、理不尽な先輩の悪意が人に及びそうになった時には毅然としてそれを食い止める。

身勝手でありながら性根に芯があります。

 

2人の怪獣はそれぞれ"群れない"ことと"攻撃性"でクラスの異物となっており、何かととりざたされるコミュ力とは無縁の存在。数々の怪獣映画に現れる怪獣たちのように異物として排除されそうになったり、利用されそうになることもあります。

 

しかし彼女たちはそんなこともやはり意にも介さないのです。

「己を貫く」という意気込みすら無く、自分の在りたいように振舞う。
周囲の雑音が無いもののように泰然としている倉田さん。降りかかる理不尽に毅然とした態度を見せる北川さん。結果として互いを助けることもあれど、基本的にはただただ自分らしくある。その姿は時に砲弾の嵐の中を悠然と歩み、時に何かを守るために他の怪獣を打ち倒す怪獣たちの姿が重なって見えます。

 

 

彼女たちは怪獣。異物。人間たちと共存はできないのかもしれません。人々の攻撃に成す術も無く破れる日が来るかもしれません。
願わくは、彼女たちが自分らしく在り続けられればと思わずにいられないのです。

 

いに怪することなく、獣じつしたひび(1) (ヤンマガKCスペシャル)

いに怪することなく、獣じつしたひび(1) (ヤンマガKCスペシャル)

 

 

桐谷さんと食卓を囲みたい

seiga.nicovideo.jp

 

マムシを食う女子高生は好きですか?
金玉を食材として考える女子高生は好きですか?
そう、みんなそんな女の子が大好きですね。わかってます。

 

ここ数年、激増している食事漫画界の中で「まだ出てなかったの?」と意外にも思える雑食漫画というジャンル。
カエル、ヘビ、サソリ、豚の睾丸。なかなかご家庭の食卓に並ばないこういった食材に対する好奇心が人一倍強い残念美人な女子高生・桐谷翔子が、それに巻き込まれる教師・榊伸一と共にこれらを調理し、そして食す。
それが今回ご紹介する『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』なのです。

 

桐谷さんは生きたカエルでも生きたマムシでも躊躇なくさばいていきます。時にトノサマガエルの頭を机の角に叩きつけ、時にマムシの首をはね、あまねく生き物を食材に変える姿には清々しさすら感じます。
ただし、味付けも清々しすぎて塩をふる以上のことはできないため、そこは榊先生が調味に一手間加えたり、食材として野草を添えるなど植物方面からのサポートを加えていきます。素晴らしき雑食師弟コンビの連携プレイ。

基本的にどの料理にも一定の美味しさを見出しているのも素晴らしいですね。ちなみに何食っても美味いと言うような子じゃありませんのよ?


さて、そんな『桐谷さん ちょっそれ食うんすか??』なんですが、料理漫画として食材のチョイス以外で非常に優れている点があります。

桐谷さんの食事スタイルが素晴らしいのです。
作画がすごいとか、リアクションが面白いとかそういうことではありません。

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食べる時は器の中を見て、咀嚼中に喋らず、飲み込んでから感想を述べる。

料理漫画ではリアクション優先になって軽視されがちな当たり前の食事の描写がなされてるんですよ(例外のシーンもあります)。黙々と咀嚼して飲み込むまでだいたい2コマは使ってます。これが素晴らしい。エキセントリックな桐谷さんですが、これだけで育ちの良さがうかがえます。素敵。一緒にカエル食べたい。


美味しいものを食べて服がはじけたり、よだれが吹き出たりする漫画もありますが、そういうのは漫画的リアクションとわかってはいるんですよ?わかってはいるんですが、発情したような顔で「おいし~~!!」とか言いながら飛び上がって口を開けて咀嚼したものを見せつけてくるような演出をされると「うるせぇ、黙って食え」とぶん殴りたくなるような気分になることもあるわけでして。


今後も桐谷さんには、よりエキセントリックな食材を、日常の食卓のように味わい続けて欲しいなと、そう思うのです。

 

桐谷さん ちょっそれ食うんすか!? : 1 (アクションコミックス)

桐谷さん ちょっそれ食うんすか!? : 1 (アクションコミックス)

 

 

球場飯でレッツプレイスリー!(三食 食おうぜ)

afternoon.moae.jp

 

魔球・エリプスハンターを引っさげて21世紀に爆誕した野球漫『ワイルドリーガー』
料理を「竣工」と呼称する熱い土木工事系料理漫画『ドカコック』
これらの代表作を持つ渡辺保裕さんの新作が球場飯漫画『球場三食(さじき)』(『アフタヌーン』連載)なのです。

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この作品の魅力は、「食と野球と球場の話題のバランスの良さ」にあります。


主人公は、球場開門前から現地入りして試合前練習を観て「野球観戦日の食事は3食すべて球場内で食べる」という規則を自らに課す青年。
彼の食事のシーンは小さいコマが1~3コマのあっさり仕立て。解説は最小限で、くどいリアクションも無い『孤独のグルメ』スタイル。

食事漫画ではあるけれど、食事はあくまで野球観戦ありきの副産物であるためこれがベストのバランスであると言えるでしょう。


そして食事シーンのあっさり感とは対照的に、野球観戦や球場そのものに関する話題は多め。多めではあるが、野球が特に好きというわけでもない自分が面白く読めてるのでクドさはありません。

また、元々ガッツリ野球漫画を描いてた漫画家さんなので途中にはさまる野球のシーンや球場の描写がしっかりしていて臨場感にあふれ、球場の雰囲気を十二分に堪能できる。話題のチョイスも、第1話で最もスポットがあたった話題が「責任審判」というのが野球漫画ではなく「野球観戦漫画」なのだという雰囲気が強く出ていて実に良いのです。

 

第1話は「明治神宮球場」、第2話は「西武プリンスドーム」と来て、次回予告では広島市からお届けと書いてあるから「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」と各地の球場を紹介していくのでしょう。読むと現地に行きたくなる漫画なのでこれは次回読んだら広島行っちゃうなぁ。


……ところで、第1話に出てきた野球観戦好き女子のつばみちゃん。

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野球観戦に真摯な態度で向き合ってメガネ+フードという実にヒロイン力の高い娘さん……

なのに、何故本気を出した途端にメガネもフードもキャストオフしちゃいますかね!

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いや、それでも、ビールおごってもらって「かたじけない」って言う仕草とか、ビールの飲みっぷりとか可愛いんだけど!
2話では姿を見せなかったけど、また出てこないかな。今度はメガネをかけたままで!